なぜNHKはネットで受信料を取ろうとするのか? 波紋広がる石原進経営委員長の発言

石原進経営委員長&籾井勝人会長

「インターネットでもいろんなお金が必要になる。公共放送としてNHKを維持していくためには、受信料を何らかの形でいただくことは必要だ」-。

NHKの最高意思決定機関、経営委員会の石原進委員長のそんな発言が、波紋を呼んでいる。

NHKは今後、ネットを通じた番組視聴者にも受信料の支払いを求めていくのだろうか。(三品貴志)

■火に油を注ぐ

石原委員長は9月13日の委員会後、記者団からネット時代の受信料制度について問われ、冒頭の見解を述べた。

もっとも、具体的な制度像には踏み込んでおらず、発言自体はNHKの内外で以前から繰り返されてきた決まり文句の範囲を超えていない。

籾井勝人会長も平成26年4月、産経新聞のインタビューで「(番組をテレビ放送と同時にネット配信する)同時再送信にはコストがかかる」と述べ、将来的にはネット視聴者にも受信料の支払いを求めることが望ましいとの考えを示していた。

ただ、今回は、ワンセグ機能付き携帯電話の所持だけでは受信契約の締結義務がないとするさいたま地裁判決が出た直後。

受信料制度のあり方をめぐる議論が再燃する中、“火に油を注ぐ”格好になったのか、インターネット上では反発する声が目立っている。

■「放送」前提の現行制度

NHKは近年、ネットサービスを拡充させており、中でもテレビ番組を放送と同時にネット配信する「同時再送信(同時提供)」は柱の一つ。

ただ、現在は、災害時や社会的関心の高い中継など限定的・試験的な運用にとどまる。

その大きな理由は、NHKがテレビの設置を前提とした放送法と受信料制度で運営されているからだ。

放送法は、NHKの「放送」を受信できる設備の設置者に対し、NHKとの受信契約を義務付けている(罰則規定は無し)。だが、ネット配信は「放送」ではなく「通信」に当たる。

パソコンやスマートフォンなどで「通信」だけで番組が視聴できるようになれば、「放送」を前提に受信料を支払っている人との間に不公平が生じる。

NHKがネットサービスを拡充する上で、受信料制度の見直しは避けては通れないというわけだ。

■新制度の「アイデア」はいつ?

ただ、新たな制度の具体像は不透明なままだ。
NHKは長年、新制度の研究を続けており、籾井会長は昨年12月の会見で「今年度(平成27年度)いっぱいくらいで、われわれのアイデアは出せるのではないか」と述べていた。

だが、今年5月には「(検討作業が)遅れている。もう少し待っていただきたい」と釈明。

それから数カ月が経過したが、NHK幹部は「そう簡単にはまとまらないだろう」と、作業が停滞していることを明かす。

NHKは近年、毎年6000億円以上の受信料収入を確保。民放キー局の売上高の数倍といわれている。

制度見直しは大きな議論を呼び、今後の経営に直結しかねないだけに、慎重姿勢を貫く構えを見せている。

一方、NHKの外からも、受信料制度の見直しを求める声が相次いでいる。自民党の小委員会は昨年10月、受信料の支払い義務化や値下げなどの検討を求める提言を公表した。

また、総務省の有識者検討会は今年9月、「受信料を国民・視聴者に納得感のあるものに」などと求める第1次取りまとめを了承。高市早苗総務相もNHK改革に意欲を示している。

経営委の石原委員長は9月13日、「総務省の考えが出る前に、NHKの考えはこうだとは言えないのではないか」と述べ、受け身の姿勢をみせた。

■「公共メディア」を見据えるなら…

海外を見渡すと、例えば英BBCでは、法律でテレビやパソコンなどの「テレビ番組サービスを受信できる装置」の設置者に「受信免許」を与え、受信料に当たる「受信許可料」の支払いを義務付けている。

また、ドイツでは2013年に新制度が導入され、テレビ所有の有無に関わらず、すべての世帯と事業所に「放送負担金」の支払いが義務付けられた。

ともにNHKよりも“厳しい”制度ともいえるが、例えば英国では、パソコンやスマホなどさまざまな端末で、ネット経由で番組を視聴できる「iPlayer」サービスを展開。

放送後、一定期間の見逃し配信サービスも提供するなど、放送と通信の融合に力を注ぐ。

一方、NHKも平成27年に中期経営計画(27~29年度)と同時に策定した「NHKビジョン2015→2020」で、「公共放送から、放送と通信の融合時代にふさわしい“公共メディア”への進化を見据えて、挑戦と改革を続ける」と打ち出した。

であるならば、NHK自身が「公共メディア」にふさわしいサービスや「納得感ある」制度のあり方の提案を急ぐ必要がありそうだ。

【引用元:産経新聞】

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