サカナクションが公式チケットトレードサービスを導入した理由と、チケット転売問題の現状

サカナクション

サカナクションが2017年1月〜4月に行う全国ツアー「SAKANAQUARIUM(A)」。このツアーでは新たな試みとして、公式チケットトレードサービスが採用された。

やむを得ず行けなくなった場合、公式のサービス内でチケットを定額で譲ることが出来る。

「SAKANAQUARIUM(A)」の公式チケットトレードサービスは、電子チケットサイト「EMTG」内特設ページにアクセスする形。

ここではファンクラブ会員同士で、定価でチケットのトレードが出来る。

定価での取引、入場保証など、公式であるからこその安全な譲渡となる(11月4日 12:00開始予定)。

このサービスを導入した理由を、サカナクションなどのアーティストのプロデューサーでもあり、自らも一般社団法人日本音楽制作者連盟 理事としてチケット転売問題の解決にも取り組む、株式会社 ヒップランドミュージックコーポレーション 常務取締役執行役員 兼 制作本部 本部長 野村達矢氏に伺った。

■イベントで発表した時には、ファンからも拍手がわき起こった

–まずはサカナクション「SAKANAQUARIUM(A)」での公式チケットトレードサービス導入を決めた理由について、お聞かせください。

野村:ライブのチケットは公演日の数ヶ月から発売されるので、当日を迎えるとやむを得ず予定が合わず行けなくなることもありますよね。

ただ、知人に譲ったり、非公式な場所で売ったりするしかなく、正式な救済措置がありませんでした。

そこで他のアーティストさんでの活用も始まりつつあるサービス・EMTGさんと話をして、サカナクションでも導入をしようと。

–他のアーティストでの導入事例もある中、今回は「SAKANAQUARIUM(A)」日程が発表されたニュースの際、この公式トレードサービスについても触れられている記事がとても多かったことが印象的でした。

「このような公式のサービスがあるんだ」と初めて知った方も多いと思います。これはプレスリリースを出す際にも、あえて意識して打ち出されたのでしょうか?

野村:そうですね、あえてニュースになるようにしました。サカナクションのメンバーにも僕の方から「こういう(チケット転売)問題が起きていて、こういう不都合がある」という点は説明させてもらって、特にボーカルの山口(一郎)はそういった事情には敏感なので、「解決していきましょう」と理解してもらっていました。

また、これまでもバンドのスタンスとして演出におけるテクノロジーの導入など新たなことは率先して導入してきたので、公式でチケットトレードサービスを提供する、ということにも踏み切ろうと。

近年、見たくもないライブのチケットを定価で買って高値で転売するという、これまではダフ屋が行っていた行為が一般のユーザーにも広がってきてしまっています。つまり、純粋に見たいと思っている人が会場からあぶれてしまうんですよね。

ライブはその場限り、その空間にいる人しか体験できないものですから、アーティストやスタッフも最大限の素晴らしいものを見せようと、もの凄く高い熱で取り組んでいます。

その努力の結晶であるライブが第三者の利益目的に扱われているのは、やはり心を痛めますよね。

–改めてこのサービスについて、詳しく教えて頂けますか?

野村:ファンクラブ会員限定の取引にはなるのですが、まずは公式として導入出来ることがすごく進歩なんですね。まず、定価での取引というスタンスにのっとっています。

ただしシステムを使っている関係上、手数料は頂く形にはなります。ただ、今回は公式トレードサービス導入にあたり、チケット販売についても電子チケットのシステムを導入したのですが、発券の段階でシステムエラーが出てしまいファンの方々にはご迷惑をお掛けしました。

これは取材でお話をさせて頂く中で、ファンの方にはまずお詫びしたいとは思っています。

これはファンクラブのステータスを4つに分けているのですが、そのロジックがシステム上正常に作動しておらず、当選すべき人に当選しなかったということが起こったというものです。今は引き続き修正対応を行っています。

–11月4日にサービス開始となりますが、今後、利用するファンの方へのサポート体制も整えていくのでしょうか?

野村:随時、SNSなどでファンの方からどういった声が挙がっているかを見ています。またカスタマーサービスについても電話番号を公開して、なるべく早い対応が出来る体制を整えています。

新しいサービスを導入するということはお客さんに負荷をかけることになるので、それは心苦しい所ではありますけれども、取り組んでいかないと先に進まないので、頭を下げてでもファンの方にも理解して頂きたいなと思っています。

–このサービスを発表したときの、ファンの方の反応はいかがでしたか?

野村:恵比寿リキッドルームで開催しているイベント「NF」で、今回のツアー開催について告知をしたのですが、合わせてこのサービスの導入も発表しました。すると、その時に拍手がわき起こったんですね。

(チケット転売問題について)問題視されているお客さん・違和感を感じているお客さんは沢山いるんだなと感じましたし、そういうチャレンジをしているサカナクションについても拍手を送って頂いていると感じましたね。

チケットトレード

■音楽業界全体を見据えての今後の対策・啓蒙

一般社団法人日本音楽制作者連盟 理事としての顔も持つ野村氏。

チケット転売問題の担当委員として、担当アーティストやレーベルの壁を超えて精力的に活動している。

チケットを純粋なライブ鑑賞のためではなく転売目的で購入し、高値で転売するユーザーが増えているというチケット転売問題。

ここからは野村氏が音楽業界全体を俯瞰した視点で、この問題をどのように捉えているのかを伺った。

野村:音楽業界全体の中でも危機感があり、日本音楽制作者連盟と各地のイベンターさんによる団体・一般社団法人コンサートプロモーターズ協会さんと色々話し合いをして、日本音楽事業者協会とコンピュータ・チケッティング協議会とも協力をいただき、チケット転売問題に対する共同声明を出しました。

こういった啓蒙活動もそうですし、極力電子化するなど転売しにくい販売方法を考えていかないといけません。

–海外での動きもやはり研究されているのでしょうか?

野村:ヨーロッパでも沢山のアーティストが声明を出していますね。また、イギリスでは(業者ではなく)政府に対して法律の面から規制してほしいという声明を出す動きもあります。

一方、アメリカではライブ・ネイションがチケットマスターを買収して、チケットマスターが公式の形でやっているというのが大きな動きですね。
チケットマスターは需要に応じて価格変動もあります。

ただ、日本においては価格変動についてはまだ音楽業界側もネガティブなので、まずは第一フェーズとして定額の公式トレードサービスを作ろうというところまでいきましょう、と。

ただ、ライブ・ネイションとチケットマスターの事例は一つのヒントにはなるかなと思います。

–価格変動もあるものの、この場合メリットになるというのは、チケットマスターがライブ・ネイションとの提携で公式のサービスになっており、アーティスト側にも利益がもたらされるから、ということなのでしょうか?

野村:そういうことですね。

–日本でも、主要な公式サービスに収斂されていくような動きが想定されるのでしょうか?

野村:まだ、その道筋は一つではなく色々なシナリオがあると思っていて、ちょうど協議中です。

今はアーティストごとに単独で電子化に対応したり、顔認証でセキュリティを上げるという方法論であったり、今回のような公式トレードサービスもあったりしますよね。

公式なオープンマーケットを作れたらいいとは思っていますが、どの会社がどういう形でやっていくかということはまだ決められていないです。

会社の論理では、定額前提では経営として成り立たないというリスクもあるので。
ある程度公的機関や業界団体がやらないといけないんじゃないかという話もしていて、多少時間はかかると思います。

–今後の対策の方針について聞かせてください。

野村:三つ軸があります。一つは、先ほどお話したような公式の場所をつくること。
どのように実現出来るかを研究することですね。二つ目は法的な部分です。

まだ、ネット上でのチケット転売を規制出来る法律がないので。先日、嵐のチケットを転売した人が逮捕されましたが、これは古物商の免許を持っていないのに古物を売ったという容疑です。

本来は、二次的に買ったものを更に売るのは免許が必要なんです。ただ、厳密に言うと一次流通で新品を買って二次流通で売るというのは抜け道になっていて、違反にならないわけです。

これを明らかな転売目的でやった場合に対する罰則規定を作らないと、法的な後ろ盾がないということになってしまうんですね。三つ目は、引き続き啓蒙活動です。

お客さんの方にはやはりモラルとしても理解してもらうことが大事ですし、アーティストが苦しむんだ、ということをもっと知ってほしいなと思いますね。

サカナクションを手がけるプロデューサーとして、音楽業界全体として、両面からチケット転売について語って頂いた。

日本音楽制作者連盟としては今後、演劇業界、スポーツ業界、テーマパークなどといった同じようにチケット転売問題に向き合っている業界との横との繋がりを作り、啓蒙活動を広げていくという。

【引用元:SENSORS】

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