テレビ番組の総合視聴率公表に大きな壁? スポンサーに警戒感のワケ

ビデオリサーチが11月に初めて公表した総合視聴率。

従来の視聴率に録画再生で見られた「タイムシフト視聴率」を加えた新しい数字で、今、一番見られている番組は何かを忠実に反映した人気のバロメーターだ。

だが、この数字が今後、同社から公表されるかどうかは今のところ決まっていない。
業界のさまざまな思惑と複雑な事情が絡み合っているからだ。

総合視聴率が登場した背景には、全体的に低減傾向にある視聴率に各テレビ局が「もっと見られているはず」という強い思いがある。

かつては娯楽のトップの座を占めていたテレビだが、デジタルビデオレコーダーの普及で番組を録画して視聴する習慣が一般に定着し、リアルタイムでの視聴が減少。

さらにスマートフォンやタブレットの普及で若者のテレビ視聴に割く時間が減り、視聴者の生活スタイルの変革とともにテレビも娯楽の王座を滑り落ちたといわれていた。

その中で総合視聴率データの公表はテレビ局側が主導した。タイムシフト視聴は10月3日から関東の1都6県で900世帯を対象にリアルタイム視聴とともに計測が始まり、最初にデータを公表したのはNHK。

10月12日に同月3日に放送された連続テレビ小説(朝ドラ)「べっぴんさん」の初回と「鶴瓶の家族に乾杯」の総合視聴率を発表し、民放各社も同調して出し始めたのがきっかけとなり、ビデオリサーチは14日に総合視聴率上位30番組をランキングにして発表した。

ランキングの結果は驚くべきものだった。
TBSの「逃げるは恥だが役に立つ」はタイムシフト視聴率が視聴率を上回り、日本テレビの「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」も視聴率に迫る数字で、ともに総合視聴率は視聴率から倍増。
視聴率だけでは番組の人気がはかれないことがわかった。

今回の発表についてビデオリサーチは「タイムシフト視聴と総合視聴率を理解していただくというのが目的」といい、今後について「テレビ局が自局のデータを出すというケースがあるかもしれないが、当社が定期的に出していくかどうかは決まっていない」という。

せっかく今まで視聴率の裏に隠れていた録画再生の実態が明らかになり、純粋に人気の番組がわかるようになったにもかかわらず、それが積極的に公表されないという事態に陥っている。

関係者によると、その裏にはスポンサー企業に警戒感があるためという。視聴率は人気のバロメーターであるとともにCM広告料を換算するための単価ともなっている。

実際、CM広告料は視聴率1%に対しいくらという値付けだ。もし総合視聴率が単価となると、タイムシフト視聴率分が上乗せされるということになる。

しかし、録画再生時、視聴者の多くはCMを早送りにして見ているとみられ、レコーダーによってはCMを録画しない「CMカット」や、再生時に自動でCMを早送りする「CMスキップ」という機能を持つ機種も出ているほどだ。

タイムシフト視聴率のうちどれくらいの割合が実際にCMを見ているかを示す正確なデータは今のところ出ていない。

そうした実情もあり、ある広告会社関係者は「リアルタイムでもどれだけCMが見られているかわからないのに、タイムシフト視聴という訳の分からないものを合算されて請求されるのはどうなのだろう」とスポンサーの思いを代弁する。

関係者によると、総合視聴率の公表により、CMが本当に見られているのかと不信感を持つ広告会社・スポンサー企業とテレビ局との間の溝はさらに広がっているという。

だが、ある関係者は「テレビ局側が本当に広告料の上乗せを目指しているとは思えない」ともいう。

現在、テレビ局は放送事業者であるとともに番組制作やコンテンツプロバイダーとしての機能を強化させており、海外などへの番組販売やブルーレイなどのソフト販売を新たな収入源として期待している。

その際、視聴率は大きな売り文句となり、売り上げに有利になる。録画視聴を含む総合視聴率の出現は「テレビ局が今後、生き残るための活路なのかもしれない」ともいう。

ネット社会の進展に伴い、他人が何に興味を持ち、何が人気なのかという情報への欲求はより増しているという。

その中で人気度を忠実に反映した総合視聴率は視聴者にとって有益なものであるのは間違いない。

一方で録画視聴の中でどれほどCMが見られているのかというスポンサー企業の不信感ももっともだが、広告単価と切り離して議論すべきではないだろうか。

【引用元:毎日新聞】

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